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第3話 指輪

ผู้เขียน: 雫石しま
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-09-19 20:49:30

 翌日、睡蓮がクリーニング店に依頼する洗濯物を仕分けしている時の事だった。シルクの白いカッターシャツを手に取ると胸ポケットに異物感があった。

「木蓮のシャツだわ、また、もう!」

 木蓮はカッターシャツやスカートのポケットに仕事で使ったクリップや硬貨を入れる癖があった。クリーニング店からは「シルクは傷みやすい生地ですからポケットの中身は取り出して下さい」と何度も注意を受けている。

「ごめんなさい」

 その度に睡蓮が頭を下げなければならなかった。

「はぁ..............学習能力を疑うわ」

 しかも今日は少し大きめで赤い色が透けて見えた。「まさか朱肉か認印!」睡蓮が慌ててそれを取り出すとガラスの塊だった。

「..............なに、これ」

 深紅のリングに薄く白い花弁が象られた「指輪」瞬時にそれが雅樹からのイタリア土産である事を悟った。指先で摘んで太陽の光にかざして見ると文字が彫られていた。

for mokuren  masaki

「.............木蓮へ」

 これは明らかに「木蓮のためだけに」雅樹が選び、雅樹がイタリア土産として日本に持ち帰った物で間違いなかった。

「雅樹」

 木蓮は出掛けていた。

「...............いつ渡したの」

 睡蓮の中に黒い沁みがポタリと落ちた瞬間だった。

「ただいまー!田上さん、今夜のご飯なーにー!」

 呑気な声で木蓮が帰宅した。妹のポケットから指輪を見つけた睡蓮はすっかり気落ちしてしまい、リビングのソファでクッションを抱えて夕暮れを迎えた。

「木蓮さん、木蓮さん」

「なに、そんなちっさい声で」

「シー!」

 玄関先でパンプスを揃えていると田上さんが肩を叩いた。

「どうしたのよ」

「睡蓮さんの様子が変です」

「変なのはいつもの事じゃない」

 どこか浮世離れした睡蓮は、時々、的外れな事を口にする。

「その.........天然ボケとはちょっと」

「..........違うの?」

「..........はい」

 キッチンからリビングを覗くと確かに微妙な面持ちでソファに身を委ねている。

「生理痛かしら」

「知りませんよ!とにかく今夜はハンバーグですからね!睡蓮さんをなんとかして下さい。お願いしましたよ!」

「うおー!ハンバーグ!」

「頼みましたよ!」

「ふわーい」

 気のない返事をした木蓮がリビングに足を踏み入れると見覚えのある物がリビングテーブルの上に置かれていた。

「.............っあ!」

「おかえり木蓮、なにがあっなの」

「あぁぁ、また出し忘れた!ごめーん!」

「.....................」

「なに、クリーニング屋に怒られちゃった?」

「その前に見つけた」

「そう、良かった!」

 あっけらかんとした木蓮の態度に苛立ちを隠せない睡蓮はクッションを床に叩き付けて立ち上がった。その剣幕に木蓮と田上は驚きを隠せなかった。

「ど、どうしたのよ!」

 睡蓮は目を見開き両手で拳を作った。

「なぜなの!」

「な、なにがよ」

「どうして木蓮へのお土産がこれなの!」

「こ、これって............それの事?」

「そうよ!」

 木蓮は睡蓮の形相に目の前でなにが起きているのか皆目分からず、二人の遣り取りを物陰から見守る田上さんは手に汗を握った。

「睡蓮のお土産はK18ヴェネチアンガラスのペンダントだってお父さんが大騒ぎしてたわよ!」

「K18がなによ!」

「ブランド品でしょ、凄いじゃない」

「ブランドがなによ!」

「睡蓮、どうしたのよ、あんたおかしいわよ」

「おかしいのは木蓮よ!」

「どういう事」

「これよ!」

 睡蓮は深紅の指輪を指で摘むと木蓮の手のひらに乗せた。

「...............このおもちゃの指輪がどうしたのよ」

「おもちゃじゃないわ!」

「屋台で買ったガラスの指輪よ」

「よく見て!」

 木蓮は言われるまま指輪をシーリングライトに翳して見た。

for mokuren  masaki

「...............なに、なによこれ」

「それが雅樹さんの本当の気持ちじゃないの!」

「まさか」

「木蓮はどうなの!」

「どうって」

「雅樹さんとはいつ会ったの!」

「それは..............昨夜、そこの坂で偶然会っただけよ」

「昨夜、昨夜、昨夜って、そんな事言わなかったじゃない!」

「言う必要ないと思っていただけよ」

「私に隠れて二人で会っているんじゃないの!?」

「睡蓮!あんたなに言ってんのか分かってんの!?」

 その時、キッチンから金属音が響き田上さんの悲鳴が上がった。どうやら二人の言い争いを見守っている間にフライパンのハンバーグが炭になり掛けたようだ。

「もっ、木蓮さん!たっー助けて下さい!」

「..............っ、いま行く!」

 ところが睡蓮は目尻に涙を浮かべながら言葉にしてはならない事を口走ってしまった。

「同じ顔に生まれなきゃ良かった!」

「どう言う意味よ」

「いつも、いつも、いつも、いつも木蓮ばかり可愛がられる!」

「そんな訳ないじゃない!」

「こんな顔、嫌い!」

 踵を返し階段を駆け上がる睡蓮の足音が遠ざかる。木蓮が床に転がったクッションをソファに並べているとフライ返しを持った田上さんがリビングに顔を出した。

「木蓮さん、大丈夫ですか」

 大きなため息が漏れた。

「睡蓮の方が可愛がられているじゃない」

 目頭が熱くなりソファに涙が零れ落ちた。その晩、睡蓮は部屋から出て来なかった。

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